土地を選ぶポイントについて、私なりの経験を基に書いていきたいと思います。当然買うまでに現場確認をしたほうが良いのですが、机上でもかなりのことが分かる便利な時代になってきたので、調べられることは先に調べることをお勧めします。最初は少し大変ですが、慣れてくると結構サクッと判断できるようになってきます。
1.そもそも気に入っているエリアか
まず何といっても重要なのがエリア選定です。予算、通勤通学の都合、住環境、治安、教育など、人によって重要ポイントの強弱が違いますが、戸建ての場合は比較的長期に住むことを想定している人が多いと思います。シンプルに、「気に入った街か」というのは大切です。私の場合は、利便性や資産性の観点から都内に限定しつつ、一方で日々の生活の利便性も維持したかったので、駅前に地元に根付いた商店街が広がっている場所を選びました。また徒歩圏内で自然が広がっている場所があることや、駅前が綺麗であること(犬の糞尿がきちんと処理されているか、ごみが散乱していないか、等)、あたりも重視しました。
夫婦や家族で優先順位をつけて話し合ってエリアを絞る(この辺はほかのサイトでもさんざん掘られているのでそこに譲ります)とともに、最後は家族全員が「気に入った街」と言えるか、というのは重要な要素だと思います。
2.土地の相場を判断できるようにする
ここについては、別ページで詳しく説明しているので割愛しますが、1点だけ強調するならば、相場よりも安く買えることは無いのでカモになるのを避けられればOK、という意識を持つことです。安い土地には必ず安いなりの理由がありますので、見かけの価格だけで判断するべきではありません。また、土地は一期一会なので気に入った土地があるなら価格交渉はほどほどにして早めに購入の意思決定をするべきです。でないと無駄に相場に明るくなるだけで一生買えません。
3.将来の人口予測を調べる
土地は、そこに住みたい人がいて初めて価値が生まれます。今どんなに人気のエリアでも、30年後に人口が激減していては資産価値は維持できません。
そこでチェックしたいのが、将来の人口予測です。
私が参考にしているのは国土交通省が作っている不動産ライブラリです。この中で、調べたいエリアを表示し、以下の画像のように人口情報>将来人口メッシュというのをクリックすると、5年毎の今後の将来人口予測を出すことができます。結局は将来にわたって街の新陳代謝が発生して、新たな買い手が出てくるとともに街の良さが維持または向上しないと資産価値は望めません。この観点から、少なくとも20~30年後でも人口が増えていくことが理想ですし、仮に減っていたとしても周辺エリアと比較して相対的に減り方が少ない場所を選んだ方が良いと思います。
ちなみに、この不動産ライブラリは優れモノで、防災情報・地形情報(大規模盛土造成地か否か)、周辺施設情報(保育園の場所、小中学校の場所と校区、図書館や出張所など)、都市計画(用途地域や高度制限、防火地域か否かなど)が地図上で表示できるので、是非使いこなしてください。
4.駅徒歩(ロケーション)にこだわる
人口動態と並んで、土地の将来的な価値に大きく影響するのが「駅からの距離(ロケーション)」です。たとえ他の条件で多少の難があっても、優れたロケーションはそれを補って余りあるほどの価値を持つことがあります。特に首都圏においては、駅徒歩の距離が最も分かりやすい資産価値の指標となるでしょう。
不動産の価値は、「どれだけ希少性があるか」が非常に重要です。
駅から離れれば離れるほど、同じ時間距離でアクセスできる物件の数は爆発的に増えていきます。これは、駅を中心とした円の面積が、半径(距離)の2乗に比例して広がるのと同じ考え方です。物件の供給が増えるということは、それだけ希少価値が急速に失われ、価格が下落しやすくなるリスクを意味します。
住みたいエリアと予算感が決まったら、その中でできるだけ利用者数の多い駅の、駅徒歩に近い場所を選ぶのが賢明です。もちろん、駅から少々遠くても、その場所に特別なこだわりや必然的な理由があれば別です。しかし、予算を下げる目的だけで安易に駅徒歩を妥協すると、結果として「安物買いの銭失い」になりかねないことを認識しておくべきでしょう。
地方都市や郊外では、駅徒歩よりも幹線道路へのアクセスや景観、学校区といった他の要素が重要視される場合もあります。しかし、本質的には「いかに希少価値を高く保てる場所を選ぶか」という考え方は共通です。ご自身のライフスタイルや地域特性に合わせて、この原則をうまく応用して考えてみてください。
5.ハザードマップ・土地の成り立ちを確認する
(1) まずは「重ねるハザードマップ」で災害リスクを総点検
国土地理院の「重ねるハザードマップ」は、洪水、土砂災害、津波など、あらゆる災害リスクを地図上でまとめて確認できる最強のツールです。個人的には特に水害系は要注意だと考えています。理由は、近年の夏場の気温上昇に伴い、気温が1℃上がるごとに大気中の水蒸気量が7%増えるとも言われており、将来必ず過去に経験したことのないレベルの水害が発生すると思っています。ただ、水は低いところに流れるという原理原則さえ理解すればリスクの高い場所は簡単に避けられます。
チェック項目は、まずは最低限、洪水・土砂災害・高潮・津波を確認しましょう。
(2) 次に「土地の成り立ち」で地盤の強さを知る
同じエリアでも、地盤の強さは土地の成り立ちによって全く異なります。一般的に、昔からある固い地盤の「台地」が最も安全とされています。こちらも、「重ねるハザードマップ」の「地形分類」というところから簡単に確認できます。
逆に注意が必要なのが、「旧河道」です。川の近くは一目瞭然でリスクが高そうとわかりますが、意外と見落としがちなのがこの「旧河道」です。その名の通り昔は川だった場所なので少し低くなっていることが多く、水が集まってきて水害リスクが高まります。洪水等のハザードマップと重ねてみると土地の成り立ちは嘘をつかないということがよく分かります。
また、他に注意するべき点としては谷や沼地を埋め立てて作られた「盛土造成地」です。特に「大規模盛土造成地」に指定されているエリアは、地震の際に崩れるリスクがあります。色々な調べ方がありますが、重ねるハザードマップの「すべての情報から選択>土地の特徴・成り立ち」の項目の中から選べますのでチェックしておきましょう。
| 大規模盛土造成地の簡易的な確認例 |
(3)さらに深堀して調査する
ここまでくるとだいぶ土地の成り立ちやリスクが分かってくると思いますが、本命の物件情報が出てきた場合には更に深堀することをお勧めします。
①断面を確認して水が集まる場所じゃないかを確認する
おススメなのが土地の断面を確認して、局所的に水が集まる場所になっていないかを確認することです。やり方は、「重ねるハザードマップ」の画面右側、その他メニュ(ブリーフケースのマーク)>断面図、を選択し、確認したい場所の始点と終点をマウスで指定します。すると、選んだ場所の断面図を出すことができます。以下は例示にちょうど良い場所をピックアップして調べた例ですが、旧河道になっている箇所が周りよりも1mくらい低くなっていることが分かります。つまり、仮に川が氾濫するような大規模な水害にならなくても、ゲリラ豪雨や線状降水帯のような局所的な大雨で最初に被害を受ける可能性が高いことが分かります。このようなニュースにも取り上げられないような局所的な浸水被害が発生することも十分考えられますので、本命の物件が出てきたらその周辺の断面の確認をオススメします。
余談ですが、局所的に水害リスクが高い場所は、周りの土地よりも少し安めに売りだされている例も散見されます。価格につられるのではなく、しっかり調べられるリスクは調べて判断しましょう。
| 東京某所の断面図確認例 |
②過去の土地の利用方法
重ねるハザードマップの「全ての情報から選択」の中から、写真という項目を見ると過去にどんな土地利用がされてきたのかがよくわかります。例えば昔は田んぼや沼だった場合は地盤が緩く地盤改良が必要になる可能性が高いとか、化学工場のような場所だと土壌が汚染されているかもしれないとか・・。しっかりと自分の土地の使い方を考慮して、リスクが許容出来るのかを考えてみましょう。
| 都内某所の過去の航空写真の例 |
③その他
6.現地を確認する
最後に、当然ですが実際に現地調査をしてみましょう。これはデータだけでは分かりません。あらかじめGoogle mapのストリートビューでざっと散歩してから実際に現地に行ってみると効率的だと思います。
・日常生活に必要なものは近くで揃うか
・騒音、振動、悪臭など、生活の支障になるような要素はないか
・大きな化学工場や空港近くの飛行機の航行エリアではないか(騒音、臭気)
・電車の線路や幹線道路の近くではないか(振動)
・明らかに問題のある周辺住民はいないか
・周辺の治安は良さそうか(道路の汚れ具合、ごみ捨て場の管理、人通りの有無等から判断)
・日当たりはどうなっているか
・駅や学校などの良く通う場所の道中で何か危険な点はないか
7.その他チェックするべき情報
他にチェックしていたのは以下の通りです。用途地域や斜線規制の有無によっても、かなり建てられる住宅が変わってきますので意外と見落としがちですが重要です。
・借地権ではなく所有権か
・用途地域と高度制限はどれくらいか(=建蔽率や容積率、高さ制限で建てられる住宅が変わる、当然周辺の住宅のサイズも変わるので住環境が大きく変わる)
まとめ:調べられることは調べたうえで判断しよう
相場観の確認、そのエリアの将来性(=資産価値)の予測、土地の成り立ちやハザードの確認、用途地区などの確認、そして現地確認、といった流れで調べていくと効率的に土地の情報を調べられると思います。ただ、上記で挙げた内容は当てはまらなかったらNGというわけではなく、あくまでどこまで許容できるかという話なので、うまく妥協点を見つけてください。
色々調べて知識がついてくると、なぜか少し安く売られている土地には何かしらのネガティブ要素があることが分かってくると思います。よっぽどの高属性やコネが無い限りは、自分だけお得な土地購入をしようと思っても難しいので、カモにならない程度で落とし所を作りましょう。
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